家づくりの仕事に携わって30年。何が住環境をダメにしているのか、どうして家を買っても家族が幸福になれないのか。そうしたことを追求してきた30年でした。


喜び多い住宅業界30年の経験での悲しい現実

30年も一つの仕事をしていると、仕事を通じて本当にたくさんの方々との出会いがあります。

特に住宅産業においては、さまざまなお客様とそのご家族の皆様と深くお付き合いさせていただくことになりますから、物販や製造業などの他の業種とは異なり、本当に重い責任がありますし、特異な仕事だと感じることも多々ございます。

楽しいことはたくさんあります。家づくりを通してお客様の喜ぶ顔を見ることができるのは何物にも変えがたい満足感を抱けますし、そのようにして建てた住宅が今でもそうしたご家族の幸せを支えていることを実感することに勝る幸せはないのでは、と思います。

しかし、時には悲しい現実を直視しなければならないときもあるのです。


出掛けずにはいられなかった欧州住宅研究旅行

私の経歴は、輸入住宅業者の営業マンから始まります。

当時、主流になりつつあったツーバイフォー工法による住宅が日本に入り、高級輸入住宅業者としてトップセールスを記録していた会社の営業マンだった私は、実際に数多くのお客様たちと面会し、立派な住宅を販売してきました。

営業の際にお客様とそのご家族と面談していると、本当に人生を掛けて住宅を購入していることがわかります。まさに「命を掛けて」いるのだ、と感じることがあります。

ところが、です。

あれだけ真剣に悩み、試行錯誤を繰り返し、最終的に「これはいい家だ!」と感動して住み始めたにもかかわらず、数年後にはそこに幸せの面影がなかったのです。

それまで『夢のマイホーム』『幸せのマイホーム』という言葉が住宅業界のキャッチフレーズだったのですが、それはまさに『まやかし』だったのではないか?

私の中で、何かが崩れていくのを感じました。

「住まいって、こんなものじゃないはずだ」

「家づくりって、もっと根本的に考えなければいけないはずだ」

そのような思いが、日増しに強くなって行きました。

仕事では輸入住宅を扱っていましたから、実際に海外先進国ではどんな住宅があるのか、ということに触れる機会はたくさんあり、調べてみるキッカケもたくさんあったのですが、一つの疑問が生じたのです。

「日本に入ってくる段階で、何かが変わっていないだろうか?」

何が違うのか。そもそも海外先進国における住まいは、日本の住環境とどこが異なるのか。わたしの疑問はどんどん大きくなりました。

「これは、実際に海外に出向いて、どんな家に住んでいるのか、どのように建てているのか、そこでどんな生活をしているのかを、自分の目で確かめるしかない!」

そう思うようになった私は、遂に、欧州諸国に向けて住宅研究旅行に出掛けることにしたんです。


欧米住宅で見つけたもの

海外に出掛けたときの経験は、今でも忘れることはありません。あの研究旅行で見たものが、自分の現在の『住環境づくり』の原点になっています。

ヒトコトで日本と海外の住環境の違いを述べましょう。

それは住宅寿命です。

これは、無料のハウジング・スクールでもお話している点ですし、これまで著書の中でも何度も強調していることです。

最近では、たくさんの建築業者が、私が述べている「住宅寿命の違い」に同調しており、『長期優良住宅』という制度をはじめ、長持ちする家づくりの社会的メリット、経済的メリットに気が付くようになりました。

それでもまだ、違和感が拭いきれませんでした。

確かに「ハード面」における家づくりのノウハウは、ほぼ完成に近い状態になりました。その一つの集大成が、自宅である『クリスタル・ハウス松岡邸』であり、2009年の建築以来、実に大勢の皆様にご見学いただき、好評を得ております。

でも、勉強会や見学会でお客様が関心を持ってくださることは、そこで終わりではなかったんです。


変化したお客様の関心事とは!?

私の勉強会に参加して、私の自宅をご覧になった方の多くは、建物のハード面にはすぐに納得してくださいます。ところが次にされる質問がとても面白いのです。

「その家でどんな生活をしているんですか?」

「その仕様にすることは、ご家族にどんな影響がありましたか?」

こうしたことに関心を持つというのは、住まいを考える上では当然なんです。ところが、こういう質問をされることを同業者に話すと、一様の答えが返ってきます。いや、答えが出てこない、と言ったほうが正確かもしれません。

「家を買った人がその後どうなろうと、関係ない」

これが、業界従事者の合言葉のようになっています。そう、『売って終わり』なんです。その家を本当に大切にしているか、そこで子供たちが元気に育っているか、真剣に考えている同業者に会うことは稀です。

「いい住環境」というのが、ハード面だけのことになっているんです。どんな素材で作るか、どんなレイアウトにするか、どんな設備を導入するか。どれもハードウェアの話なんです。

このようなお話をすると、「いや、そんなことはないですよ!子供の成長に良いプランニングも、インターネットで調べるとたくさん載っています!」と反論される方もいらっしゃることでしょう。

そうですね、例えば、

「自然の無垢材を使うと、子供の情緒に良い」

「シックハウス対策をしておくと、健康に良い」

「日当たりを良くすると、元気が良い」

「天井を高くすると、子供がのびのび育つ」

確かにいろいろあります。でも、やはりハード面なんです。だって、「自然の無垢材」「シックハウス対策」「日当たり」「高い天井」というのは、どれもハード面の話ではないでしょうか。

どのホームページを見ても、子供の成長を「建物のハードウェア面」に任せてしまっていて、それはあたかも、幼児の子守にテレビやDVDをあてがうかのような、親の存在がそこになくても良い話ばかりではないでしょうか。

そうなんです、海外には、単に100年住宅という技術があるというだけではないんです。「100年住宅を使って人と人との絆を深める生活習慣」が確立されているんです

ところが日本は「100年住宅」の文化そのものが廃れてしまっているために、それを建ててどうしたらいいのか、そもそも家でどんな風に子供と接して行けばいいのか、ということがわからないんです。


「子供とどんな過ごし方をすればいいの?」

どのように生活すれば、子供ともっと良くコミュニケーションが図れるのか。どうすれば夫婦の絆を深めることができるのか。どうしたら二世帯住まいでも親子の関係を良く保つことができるのか。

ということに関心を持つ、比較的若い方々が増えています。

ですから、現在の私の役割というのは、「100年住宅に見られる住環境の意義を説明し」「現時点での住まいの問題点を明らかにし」「その改善点を示して次世代に繋げる」ことなんです。

実際に私の自宅をご覧になった方は、「これは確かにいい!自分もこういう家に住みたい!」とおっしゃいます。でもそれは、単純な見た目の話ではありません。インテリアでもないんです。

どのように説明すれば伝わるでしょうか。そう、「文化」なんです。家の文化であり、住環境の文化なんです。

目の前にある空間に、文化や習慣が見えてくるんです。生活感が現れているという意味ではありませんよ。「良い文化」「良い習慣」が想像でき、そこで生活している私たちの家族がイメージできるというのです。

「このバルコニーで夏に家族団らんで夕涼する姿」

「大吹き抜けを通して空気を感じ合っている家族」

「この真っ白い階段をすがすがしい気持ちで昇降する家族の姿」

「この広々したキッチンで奥様と娘さんたちがおいしい食事を作る様子」

そういうイメージが伝わり、そういうイメージで自分の「住環境」だけではなく、「家族一人ひとり」が関わっている空間のプランニングを考えるようになるお客様がたくさんいらっしゃるのです。


あなたは実際に想像していますか?

「家族の幸せのために家を建てる」というのは間違っています。幸せな家族というのは、住まいにどれほどの限界があっても、幸せなんです。そうした秘訣があるんです。

しかし、住宅を購入して最終的に家族の絆が弱くなってしまう例も実際にたくさんあります。

ですから、真剣に考えていただきたい。

『家を、住まいを使いこなすとはどういうことなのか』を。

うれしいことに、私が主催している無料のハウジング・スクールは毎月途絶えることなく予約が入っており、最近では直接お電話をいただいたりやメール相談なども通して、『人と人との絆を深める住環境』の造り方を知ろうとする様々なお客様がご相談にこられますし、中にはすぐに改善策に取り組まれるユーザー様もいらっしゃいます。

このホームページを通して、私が実際に経験した事柄、そして実際に見聞きした事柄、ハウジング・スクールで扱っている内容を紹介します。ここに載せている情報に基づいて、じっくりと時間を掛けてあなたの住環境と比較・想像してみてください。

そしてもし、「これは今の自分が抱えている問題にも当てはまるのでは?」とお感じになりましたら、どんな小さなことでも構いません。改善策を考えるために、いつでもご相談ください。

このホームページが、住環境が家族の生活に大きく影響するということに気付いていらっしゃる皆様のお役に立てれば幸甚です。

2011年11月 松岡在丸


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